◆8月女性会員の会「会員を囲んで」第9回
話題提供:小柴信子さん
レジュメ
日時:2005年8月6日(土) 13:30−16:00
会場:湯島総合センター3偕 洋室
(1階は幼稚園、4階が図書館の4階建て建物)
内容:「動脈におけるLDL輸送シミュレーション−動脈硬化発症機序解明のための医工連携」
ご紹介:
力学現象をコンピュータで数値的に解く手法を計算力学(Computational Mechanics)といい,
その代表的手法のひとつが有限要素法(Finite Element Method)で,建造物や航空機等が
解析されてきました.最近,医工連携のもとに生体現象の解析に使用されるようになり
ました
.
動脈硬化はLDL等脂質の血管への蓄積により発症し,血管の湾曲部・分岐部に多発します.
血流による流体力と血管壁の変形の相互作用による力学的現象が重要な役割をもつと考えら
れていますが十分には解明されていません.冠状動脈の湾曲部における血流と血管壁の変形,
および血液と血管壁のLDL濃度分布の有限要素法によるシミュレーションについお話させて
いただきます.
感想文
「女性会員を囲んで」が開かれ、小柴信子さんが博士論文にまとめられた成果をお話し下さいまし
た。 コンピュータを使って物理現象を解析する手法を計算力学といいますが、その代表的手法の
ひとつに「有限要素法」があります。対象とする物体をたくさんの小さい要素にわけてそれぞれの
要素ごとに方程式を作成し、これを連立させて全体の様子を知るという方法で、空気や水の流れ、
音響効果、建物や航空機の強度などさまざまな解析が行われています。最近は医学と工学が連携し
た生体現象の解析にも応用されるようになりました。小柴さんはこの手法を使って、血液中の血液
の流れを研究されました。
動脈硬化はLDL(低比重リポたんぱく)など脂質が血管壁に蓄積することにより発症し、血管
の湾曲部と分岐部に多発することが分かっています。この部分は血液の流れが他と追っていて、
血液の流れと血管壁の変形の相互作用による力学的現象が重要な役割をもつのではないかと考えら
れますが、まだ充分には解明されていません。小柴さんは湾曲した直径3.53 mm、長さ17.6 mmの管
をヒト右冠状動脈のモデルに選び、この管内の血流、血管壁の変形、血液と血管壁のLDL濃度分布
を計算されました。血管壁は間隙が液体で満たされた多孔質体でできていると考え、心臓の拍動に
よって血液が血管を流れると同時にこの間隙部分も透過流ができると仮定して濃度解析を行うと、
湾曲部をすぎたところで血液の流速が遅くなり、LDL濃度が高くなることがわかり、実際の臨床結
果と一致させることができました。
一つの計算にコンピュータで何ケ月もかかる上に、必ずしも予想通りの値がでないこともあり、
このような成果が得られるまでには多くのご苦労があったそうです。この結果は、血管のバイパス
手術の事前評価や、新薬開発などの検討にもつなげることができるそうで、今後のご研究が期待さ
れます。当日は10名が集まり、計算をもとに描かれたきれいな動画などを見ながら、お話に耳を傾
けました。 (森崎尚子さん)
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