日本科学者会議東京支部


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豊洲・築地市場問題:再度の要望書1
東京都知事 小池百合子殿
東京都が土壌汚染など、重大問題を解決しないまま豊洲市場を開場させたことに抗議し、あらためて豊洲市場の科学的な手段での安全点検とその結果の公表を求めます。また、安全にかかわる重大問題が判明した場合に備えて、築地市場の解体を中止するよう求めます。
2018年10月21日 日本科学者会議東京支部(常任幹事会)

10月11日、東京都は、安全や運営に支障をきたす恐れのあるさまざまな問題が指摘されるなかで、豊洲市場の開場を強行しました。日本科学者会議東京支部はこのことに強く抗議します。
去る9月6日、日本科学者会議(JSA)東京支部は、「安全性の徹底的な検証なしの豊洲市場への移転の中止を求める」(要望)を貴職に提出し、「地下には有害物があっても地上は安全」との専門家会議の「安全宣言」は科学的根拠に乏しいことを指摘しました。そして第三者による安全性の検証および情報公開を求めました。

例えば、7月30日に、地下ピットに原因不明の水染みが見つかりました。都は、最初は天井の結露と説明し、その後、雨水と説明していますが、その結論に至った根拠はなんら示されていません。私どもは、もしその原因が地下ピットへの地下水の浸水であった場合には、地上への有害物質の拡散へとつながることを危惧し、水染みの原因解明のための科学的な検査を求めました。しかし、貴職は、この要望にたいしてなんの回答もされないまま、市場を開場されました。

 私どもが要望書を提出した直後の9月11日、市場の敷地内で長さ10メートル、段差約5センチのひび割れがあることが発覚しました。都は、ひび割れを1年近く前から把握していたこと、これらのひび割れを隠して農水省へ認可申請したことを認め、「建物周辺に施した盛り土部分の地盤が水分などを失い徐々に沈下した。一定の時間が経過すれば沈下は収まる」と説明しました。この説明は、ひび割れの原因の一つの可能性を述べたにすぎず、「時間が経てば沈下が収まる」根拠については納得できる説明がされていません。しかも、その後の調査でさらに10か所に亀裂が見つかっています。亀裂から地上に、土壌中の有害物が拡散する恐れを当然考慮すべきですが、なんらの言及もされていません。

さらに、9月23日には、水産売場近くのマンホールから汚染未処理の地下水が30分近く噴出しました。この噴出について都は、「揚水ポンプの『空気弁』の不具合のため、浄化する前の地下水が漏れ出したが、高濃度の汚染は検出されていない。短時間、局所的な噴出なので環境に悪影響を与えることはない」と述べました。環境に悪影響を与えないという見解はどういう根拠に基づくものか、これも疑問です。
これまでに行われた地下水モニタリングでは、環境基準の100倍を超すベンゼンや、(あってはならない)シアンが検出されています。環境基準による検査の対象にならない多数の重金属の存在も、研究者によって報告されています。われわれは、地下水の地上への噴出は、有害蒸気や残渣の発生につながり、市場労働者の健康や食の安全に大きな影響を与えるものと考えます。


日本科学者会議東京支部として、以下の4点を要望いたします。
(1)本会は9月6日の要望書で、今回の水染みに関して「第三者の専門家などによる科学的な手段による原因究明のための立ち入り検査」を貴職に求めました。これに対する文書回答を11月6日までに行うことを求めます。
(2)市場内に発生した不安材料について、科学的手段を用いて原因究明し、その結果を公表し、納得の行く説明を、11月末日までに行うことを求めます。
(3)こうした対応措置を機敏に行い、消費者にとって安心で、市場労働者にとっても安心して働ける市場環境を整備することを強く求めます。
(4)また、少なくとも市場労働者が安心して働ける環境が整うまで、築地市場解体を中止し、使用可能な状態で維持することを強く求めます。


「共謀罪」法案の衆議院法務委員会での強行採決に怒りを込めて抗議し、撤回を求める
2017年5月22日,日本科学者会議東京支部幹事会

「共謀罪」法案は、19日午後の衆議院法務委員会で、自民党・公明党・維新の党の賛成多数で可決された。23日の衆議院本会議で可決し、参議院に送付する構えである。
「心縛る法律はいらない」「表現・思想の自由を抑圧するな」「権力による恣意的解釈が可能な危険な法律」「戦前の治安維持法の再現、国民の口をふさいで、戦争に向かうための法律」「環境問題はじめ住民の意見表明が怖くてできなくなる」、等々の国民の不安や疑念を封じての強行突破であった。
私たちはこのような無謀な蛮行に怒りをもって抗議する。

国家権力が「共謀罪」を活用して国民生活全体を監視し、捜査当局の都合次第で国民一人ひとりの内心にまで侵入し、罪をでっちあげて懲罰し、国民の口を封じて戦争のできる体制をつくりあげようとする意図がますます明白になってきた。政府答弁では、捜査において手段は選ばないとし、すでに令状なしでGPS(全地球測位システム)を利用した捜査がなされている。固定・携帯電話の盗聴はもちろん、SNS(=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も監視の対象としている。「一般の人でも監視対象にならないことはない」「普通の団体でも性質が変わったと捜査当局が判断すれば組織的犯罪組織と認定される可能性はある」としている。

国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は、「共謀罪」法案に対する強い疑念を示す書簡(5月18日付)を安倍首相宛に送付した。書簡の一部概要は以下のとおりである。 「組織的犯罪集団」の定義は漠然としておりテロ組織に限定されていない。組織犯罪やテロリズムとはまったく関連性のない犯罪が新法の適用対象とされている。「計画」の具体的な定義の説明は十分でなく、「準備行為」はあまりにも曖昧な概念である。起訴に先立ち被起訴者に対する監視の強化が予測されるが、現状では、プライバシーに関する権利や国民の自由の行使に重大な悪影響をおよぼすという深刻な懸念が生じる。「共謀罪」法案は抽象的で、主観的概念による極めて広い解釈が可能であり、法的明確性の原則に適合しない。法案成立を急ぐあまり、人権に重大な悪影響をおよぼす可能性についての広範な国民的議論を不当に制限している。

ケナタッチ氏は書簡の末尾で、「人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有している」として、この書簡が公開されること、書簡に記された私の疑念および質問に応えてほしいこと、国際法秩序と適合するように日本の審議中の法案および他の既存の法律の改善のために専門知識と助言を提供する用意があること、などを記している。

私たち学術に従事する者にとって、もっとも大切な事柄の一つは内心の自由への希求である。それは、広く創造的な仕事にたずさわる人々にとって、そしてそればかりでなく、自らの人生を愛し、生き、考えるすべての人々にとって同様のことである。私たちはこれまでに再三にわたって、とくに、内心の自由とそれにもとづく学問の自由とを敵視する「共謀罪」の不備・危険性を指摘し、その撤回を求めて国民的共同を強めてきた。ここにあらためて、安倍内閣がケナタッチ氏書簡に示された国際的視点と常識に応えるとともに、「共謀罪」を撤回することを強く求めるものである。



戦争法(安保制) 廃止をめざすあらたな運動への期待と連帯の決意


原発推進の「エネルギー基本計画」の撤回を求める

安倍政権は4 月11 日、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて長期にわたり使用し続けるとする「エネルギー基本計画」を閣議決定した。 東京電力福島第一原子力発電所事故によって大量の「死の灰」がまき散らされ、3 年たった現在も14 万人が過酷な避難生活を強いられ、廃炉作業の見通しはおろか日々汚染水対策の危機に直面している。ひとたび原発過酷事故が生ずればそれは制御不能で、取り返しがつかず、原発は人間社会と共存できない技術であることが、福島第一原発の事故から我々が得た痛切な教訓である。各種世論調査でも、国民の多くが原発再稼働に反対し、原発のゼロ化を望んでいる。この「エネルギー基本計画」の閣議決定は、福島第一原発事故の教訓を無視し、被災者や原発に不安を抱く圧倒的多数の国民の願いに背を向けるものであり、この暴挙に対して厳しく抗議するものである。

この「エネルギー基本計画」は以下の重大な問題をはらんでいる。
第1 に、原発再稼働の推進を打ち出したことである。その根拠として「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、(中略)再稼働を進める」と規制委員会のお墨付きを掲げている。しかし福島第一原子力発電所事故の原因究明さえ進まず、規制委員会自身も認めるようにこの規制基準は「原発事故ゼロ」を保証するものではない。それは新たな「安全神話」づくりであり、そうした虚構による再稼働の強行は決して許されない。
第2に、原発輸出に積極的に乗り出し「インフラやエネルギー供給事業として海外に供給するための、より広い視点に基づいた海外市場の開拓に取り組む」としている点である。そもそも人類と共存できない原発技術の輸出は、社会的道義に反し、行うべきではない。
第3に、核燃料サイクルの推進を再確認し、プルサーマル、六カ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工、高速炉の研究開発、を進めるとしている。 この計画はすでに莫大な国家予算と時間を費やしたあげく、技術的に破綻をきたした危険きわまりない計画であり、到底許容できない。
第4に、使用済み核燃料・高レベル放射性廃棄物の処理については、「対策を将来へ先送りせず、着実に進める」と謳っているが、具体的な計画は皆無である。「最終処分場の立地選定にあたっては、(中略)施設受入地域の持続的発展に資する支援策を国が自治体と協力して検討、実施する」とあるが、これはこれまで原発建設のたびに繰り返されてきた利益誘導の表明に他ならない。
第5に、原発を「重要なベースロード電源」とする根拠そのものが虚構である。同計画では、その根拠を「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉」としているが、事故処理のコスト、使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物の処理のコストを含めれば、原発のコストは極めて高く、いったん大事故が起きれば一気に失われる不安定電源である。
第6に、同計画は、「企業が活動しやすい国とするために、日本の立地競争力を強化するべく、エネルギー分野における改革を進め、電力・エネルギー制約の克服とコスト低減が同時に実現されるエネルギー需給構造の構築を推進していく」と露骨に述べているように、輸出大企業の国際競争力の強化をめざす安倍政権による、原発再稼働ありき、原発輸出ありきの計画であり、国民の安全を犠牲にした企業利益最優先の計画である。

日本科学者会議東京支部は、こうした数々の重大な問題点を含み、国民生活に重大な影響を与える「エネルギー基本計画」の撤回を厳しく要求するものである。


2014.4.30 日本科学者会議東京支部常任幹事会声明
原発推進の「エネルギー基本計画」の撤回を求める

安倍政権は4 月11 日、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて長期にわたり使用し続けるとする「エネルギー基本計画」を閣議決定した。 東京電力福島第一原子力発電所事故によって大量の「死の灰」がまき散らされ、3 年たった現在も14 万人が過酷な避難生活を強いられ、廃炉作業の見通しはおろか日々汚染水対策の危機に直面している。ひとたび原発過酷事故が生ずればそれは制御不能で、取り返しがつかず、原発は人間社会と共存できない技術であることが、福島第一原発の事故から我々が得た痛切な教訓である。各種世論調査でも、国民の多くが原発再稼働に反対し、原発のゼロ化を望んでいる。この「エネルギー基本計画」の閣議決定は、福島第一原発事故の教訓を無視し、被災者や原発に不安を抱く圧倒的多数の国民の願いに背を向けるものであり、この暴挙に対して厳しく抗議するものである。

この「エネルギー基本計画」は以下の重大な問題をはらんでいる。
第1 に、原発再稼働の推進を打ち出したことである。その根拠として「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、(中略)再稼働を進める」と規制委員会のお墨付きを掲げている。しかし福島第一原子力発電所事故の原因究明さえ進まず、規制委員会自身も認めるようにこの規制基準は「原発事故ゼロ」を保証するものではない。それは新たな「安全神話」づくりであり、そうした虚構による再稼働の強行は決して許されない。
第2に、原発輸出に積極的に乗り出し「インフラやエネルギー供給事業として海外に供給するための、より広い視点に基づいた海外市場の開拓に取り組む」としている点である。そもそも人類と共存できない原発技術の輸出は、社会的道義に反し、行うべきではない。
第3に、核燃料サイクルの推進を再確認し、プルサーマル、六カ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工、高速炉の研究開発、を進めるとしている。 この計画はすでに莫大な国家予算と時間を費やしたあげく、技術的に破綻をきたした危険きわまりない計画であり、到底許容できない。
第4に、使用済み核燃料・高レベル放射性廃棄物の処理については、「対策を将来へ先送りせず、着実に進める」と謳っているが、具体的な計画は皆無である。「最終処分場の立地選定にあたっては、(中略)施設受入地域の持続的発展に資する支援策を国が自治体と協力して検討、実施する」とあるが、これはこれまで原発建設のたびに繰り返されてきた利益誘導の表明に他ならない。
第5に、原発を「重要なベースロード電源」とする根拠そのものが虚構である。同計画では、その根拠を「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉」としているが、事故処理のコスト、使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物の処理のコストを含めれば、原発のコストは極めて高く、いったん大事故が起きれば一気に失われる不安定電源である。
第6に、同計画は、「企業が活動しやすい国とするために、日本の立地競争力を強化するべく、エネルギー分野における改革を進め、電力・エネルギー制約の克服とコスト低減が同時に実現されるエネルギー需給構造の構築を推進していく」と露骨に述べているように、輸出大企業の国際競争力の強化をめざす安倍政権による、原発再稼働ありき、原発輸出ありきの計画であり、国民の安全を犠牲にした企業利益最優先の計画である。

日本科学者会議東京支部は、こうした数々の重大な問題点を含み、国民生活に重大な影響を与える「エネルギー基本計画」の撤回を厳しく要求するものである。


2012.5.20 日本科学者会議東京支部第46回大会 特別決議
JAXA法からの平和目的規定の削除に反対する決議
 第180回通常国会に,「独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)法」(以下,JAXA法)の改定案(内閣府設置法等の一部を改正する法律案)が提案されている。この法案は,JAXAの宇宙研究・開発を「平和の目的に限り」(第4条)とする現在の規定(以下,平和目的規定)を削除し,「宇宙基本法第二条の宇宙の平和的利用に関する基本理念にのっとり」とする内容である。
 日本の宇宙開発は1969年の国会決議「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」が根幹をなしていた。そして,「平和の目的に限り」は「非軍事」であるとの解釈が国会における審議・答弁で定着していた。しかしながら,この解釈を変更し,「専守防衛の範囲内で防衛目的での利用は可能になる」としたのが2008年5月に成立した宇宙基本法である。宇宙基本法では,第2条で宇宙開発利用を「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり,行われるものとする」と規定する一方,第14条 で「我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため,必要な施策を講じるものとする」と規定して,宇宙の軍事利用への道を開いている。そして現在,軍事偵察衛星である「情報収集衛星」(内閣官房が主管)やミサイル防衛(防衛省が主管)のための日米両国による共同研究開発が「日本国憲法の平和主義の理念にのっと」って行われている。4月30日に発表された日米両首脳による共同声明では「安全保障上の宇宙に関する協力」がうたわれており,対米従属の下でJAXAがアメリカの世界戦略の一端を担わされようとしている。
 JAXA法から平和目的規定が削除されると,宇宙基本法で危惧された宇宙の軍事利用がさらに拡大し,周辺国との無用の軍事緊張を生みだし,歯止めのない軍拡競争が進むことが懸念される。また,JAXAの研究者たちを軍事研究に動員することにより,研究成果が公開されなくなり,研究者の間の自由な議論がなくなり,異論をさしはさむ者は沈黙させられるか排除されることになり,宇宙研究・開発の健全な発展が阻害されることになるだろう。
 また,改定案では,政府がJAXAに対して軍事協力を求めることが可能となる規定が追加されたり(第24条),文部科学省の宇宙開発委員会を廃止して内閣府に宇宙政策委員会を設置することも盛り込まれている。自主的で自由な科学的探求よりも,政治(軍事),経済(利潤追求)の論理が優先されるという,我々が原子力発電所で経験した事態が繰り返されるおそれがある。
 以上より,我々はJAXA法からの平和目的規定を削除することに反対し,日本の宇宙研究・開発を軍事利用しないことを強く求めることをここに決議する。
2012年5月20日
日本科学者会議東京支部第46回大会

2011.5.22 日本科学者会議東京支部第45回大会 (1/3)
被災者・被災地の救援・復興支援と原発事故の脅威を取り除くための新たな決意表明
 2011年3月11日、東日本を襲った地震と津波による被害は、5月21日現在、死者1万5148人、行方不明8881人、避難10万9456人(東京新聞)となり、決してあってはならない、許されてはならない未曾有のものとなっている。また福島第1原発からの放射能漏出はいまだ進行中で、人体への悪影響と自然破壊が懸念されている。東京電力が事故収束に向け「行程表」を発表して1ヶ月後のいまなお、当初の予定から大きくはずれて、危機的状況にあり、住民への脅威・加害は長期化している。
 日本科学者会議東京支部は、被災者のみなさまに心からお見舞い申しあげるとともに、被災者と被災地の救援と復興にあたって、被災者が自力で再出発が可能なように国が責任をもって生活基盤の早期回復をはかること、復興計画は住民合意にもとづいて市町村県国が連携しておこなえるようにすることを、政府および関係機関に強く求める。
 とりわけ原発事故に関しては、当面の危機打開と事態の収束のために、原発プラントの実況を時々刻々明らかにして、科学者、技術者の英知の結集をはかること、放射性物質の広がりと累積積算値についての正確なモニタリングとその結果の公表をおこなうこと、東電、政府は原発事故の損害を被災者に全面的に補償すること、などを求める。
 福島原発事故を契機に、科学者の諸組織・個人から原発にかかわるさまざまな意見表明がなされているが、日本学術会議は、「エネルギー政策の選択肢」を検討する委員会を設置して、原発の「開発の継続」とともに「原発の放棄」も選択肢の一つに掲げて、「国民のエネルギー政策をめぐる議論に提供する」ための「中間報告」を6月を目標にまとめる予定とのことである(日本学術会議「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する日本学術会議から海外アカデミーへの現状報告」,5月2日)。
 日本科学者会議は、原発設置の1970年代初頭から、政府および原発推進勢力の「安全神話」の吹聴とそれにもとづく原子力政策にたいして批判や提言をおこなってきた。日本科学者会議が、この度の過酷事故とその原因、さらには安全管理体制を直視し、これまでの批判と提言をより正しく発展させ、自らの社会的責任を果たすためには、あらゆる科学的知見と経験とを総結集して、原発の廃止をめざす取り組みを国民とともに深く議論し共同行動を強めることが必須の課題であると考える。
 原発廃止への一つの道筋としては、原発の新増設計画の撤廃は当然として、全国の54箇所すべての原発の総点検を急ぎ、安全の保障されない原発と老朽化した原発はすぐに停止すること、それ以外の原発も段階的に停止することとし、すべての原発を安全に廃止する措置を講ずること、「安全神話」の成因の解明と科学的な克服を促進すること、さらにエネルギー多消費型社会を見直すとともに原発依存から脱却し自然エネルギーへの計画的転換をはかること、等々が考えられる。
 この度の原発事故収束と安全化、被害防止、エネルギー政策の転換、大震災からの復興においては、学問領域を横断する科学的知見が希求されている。日本科学者会議はその会則において、科学の進歩を人類の真の幸福のために役立てることを謳っている。この精神にそって、私たち日本科学者会議東京支部は、あらゆる科学的知見と経験とを総結集してその先頭に立つ新たな決意をここに表明する。

2011.5.22 日本科学者会議東京支部第45回大会 (2/3)
東日本大震災被災への支援と防災都市東京へ向けての取り組み強化を
  東日本大震災と福島原発の重大事故は、未曾有の惨禍をもたらしているが、都政においてはその教訓に学んで、防災政策・行政の抜本的転換が求められている。
かつて革新都政の時代に制定された震災予防条例の前文には「地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは人災である」と記されている。その精神は、地震は防げなくても人間の英知と科学・技術とで、被害を最小限に食い止めることができる、ということである。石原都政はそれを改悪し、「まず第一に『自らの生命は自らが守る』という自己責任原則」を唱え、都の震災対策予算を大幅に削減してきた。「東京の新しい都市づくりビジョン」による超高層ビルの乱立のもとで、防災対策はほとんど放置された状態にある。   石原知事は、「何がぜいたくかといえばまず福祉」との言葉どおり、高齢者福祉をはじめあらゆる分野での福祉切り捨ての行政を推進してきた。福祉を守ることのできない政治が災害から命を守ることもできないことは明白である。東日本大震災では、避難所で命を落とす痛ましい事態があいついで起こったが、石原都政のもとで、都直営の病院は16から8に半減した状態では、災害時の救命に重大な危惧の念を抱かざるをえない。
  東京都は被災者支援と原発事故による危機回避のために大きな役割を果さなければならない。被災地への燃料・水・食料・医薬品の提供、医療救援チームの派遣、住宅の提供など、東京都の持てる力を十全に発揮することが求められている。
東京でも、建物の破壊や地盤の液状化による被害、交通休止による大量の帰宅困難者をだした。病院や鉄道などを含め節電の強要が日常生活をいまなお圧迫している。豊洲の築地市場移転予定地で約90箇所の液状化が生じ、ベンゼン・シアン・砒素などの化学汚染物の拡散が懸念されている。都はこれについても、「一流の学者が大丈夫と言っている」とくり返すだけで何らの検討も行わず放置しているが、早急に対策を講じるべきである。
石原都知事は「東京湾につくったっていいくらい日本の原発は安全だ」と言って、原発の「安全神話」を吹聴してきた。数十年のうちに、首都直下、房総沖、東海などでの大地震発生の可能性が高いことが予見されている。政治・経済の中心機能が集中し、過密な人口とそれを支える巨大複雑なインフラ基盤を有する東京において、東日本大震災の教訓をいかに学んで防災政策の転換に活かしていくかは喫緊の重要課題となっている。
東日本大震災からの重要な教訓とすべきことの一つは、「想定外」という責任回避論に鉄槌をくだすことである。科学・技術の進歩により、自然現象を契機として発生する災害については、その発生地域、発生確率等の予測、被害予想もされるようになっている。問題は、防災関係者が指摘するように、科学・技術の成果の誤った利用、その利用過程でのシステム的欠陥を根本的に排除しなければならないことである。
  都民のための防災政策への転換には、都民参加による総合的政策が必須である。憲法で保障された生存権を守るためでもある災害防止運動を、広範な人びとと共同して地域から展開することが重要となっている。新自由主義的政策のもとで進められてきた防災政策の転換は容易ではないが、都政の責任を明確にしつつ、新しい防災政策の確立に挑戦する時である。日本科学者会議東京支部は、東日本大震災とその復興支援から多くを学びつつ、都民の命とくらしを守る防災充実化のための運動を強める決意を新たにするものである。

2011.5.22 日本科学者会議東京支部第45回大会 (3/3)
研究者・教育者の権利侵害110番委員会の新設について
 日本科学者会議東京支部は、昨年の第44回大会において、「研究者・教育者の権利および地位の擁護のための決意表明」を採択した。そこでは、歴代政府・与党の「構造改革」路線にもとづいて、研究と教育の現場で基盤的経費削減と競争原理の導入が強行され、学校経営側の専断的運営の強まり、大学の自治・学問の自由・教育の自由を敵視したさまざまな攻撃の強まり、研究者・教育者の多忙化と疲労の蓄積および低賃金化と身分の不安定化の進行、大学間の競争と格差拡大の進行、多くの学術分野を支えているポスドク・非常勤研究者・教育者の研究・生活の困窮などを指摘し、また、研究者・教育者が研究条件の確保と生活条件の改善を要求し、学術研究のつり合いのとれた発展をめざして行動することは、当然の権利であり、社会進歩のための責務でもあるとの自覚に立って、権利のためのたたかいを発展させる決意をあらためて表明した。
 権利のためのたたかいにおいて、経営の都合や経営者の恣意的人事により、意にそわないものに対する人格攻撃、報復的処分、解雇・雇い止めなどの攻撃がくり返されている。このような不合理を是正し社会正義の実現にその機能を発揮すべき裁判所は、いくつもの判例に見られるように、日本国憲法23条(学問の自由)、教育基本法第9条(教員)の精神をないがしろにし、あるいは無理解の状態にある。権利侵害事件が裁判所での係争事案となったとき、司法が権利侵害を糾弾し救済するよりも、経営者側の論理によりそった不当な判断を下すことがあまりにも多い。先の決意表明においては、このことへの注意も喚起し、裁判所に公正な裁判を行わせる運動の重要性をも訴えた。
 「決意表明」後の1年間をふりかえると、「君が代」不起立に対する懲戒処分の取消しを命じた東京高等裁判所判決、長年契約を更新されてきた加茂暁星高校の赤井・山田両非常勤講師の雇い止め事件についての新潟地方裁判所による無効判決など、画期的な判決を勝ちとる前進があった。他方、研究・教育現場の実態を見ようともせず、形式的な法理にとどまって、研究者・教育者の権利を無視した司法判断が続いている。埼玉女子短大衣川准教授解雇事件も、過労死労災認定を求めていた中国人ポスドク苗研究員の裁判も、最高裁から棄却・不受理の決定を受けた。いずれも使用者側・国側の主張をそのまま追認した許し難い、本来あるべき司法判断を放棄した決定である。疋田教諭分限免職控訴審では、控訴人側が求めた証人申請を退けてまもなく判決が下されようとしている。司法の良心を示させる運動は今後ますます重要となっている。
 本来、研究・教育は競争原理や経営効率を導入してはならない分野であり、そのことはすでに体験済みのことである。憲法に保障された学問の自由の原則のもと、国公立・私学を問わず、その公共性をふまえた自由闊達な発展が不可欠である。そのための努力と献身に対して敵意をむき出しにした権利侵害の攻撃に対して、いま、その攻撃の本質を見抜き、広く連帯して毅然とたたかうことが求められている。
 日本科学者会議東京支部は、このような運動の一翼を担うものとして、権利侵害110番委員会を新設し、研究者・教育者が人間らしく生きるための諸権利の擁護の運動をつくっていく決意をここに表明する。

2010.5.23 日本科学者会議東京支部第44回大会
研究者・教育者の権利および地位の擁護のための決意表明
財界の意向を最優先とした、歴代政府・与党の「構造改革」路線にもとづく科学技術・教育行政の推進のもとで、基盤的経費が削減されるとともに競争原理が持ち込まれ、日本の科学技術開発と教育は産業界に直結する方向へ大きく偏向し、企業の論理・管理運営方式の大学・研究機関・高等教育への適用がはかられている。明らかな労働基準法違反、労働安全衛生法違反、就業条件の不明示の職場も生じている。産業界からの軍需産業振興・軍事研究の露骨な要求も強まっている。
 これらと深いかかわりをもって、研究と教育の現場においては、国民生活全般の疲弊と同様に、危機的状態が深刻に進行している。理事長や学長・校長などによる専断的運営が強まり、「職場に憲法なし」と豪語して、労働者の基本的人権を無視してきた企業の論理が学園にも広がりつつあり、大学の自治、学問の自由、教育の自由を敵視して、これらを押しつぶす攻撃が加えられてきている。大学間の競争と格差拡大をはかり、研究・教育には決してなじまない効率性の追求が強制されている。研究者・教育者の多忙化、疲労の蓄積、過労死、低賃金化、身分の不安定化がすすみ、くわえて管理強化と協力関係の分断の攻撃、正義と公平のために保障されなければならない諸権利の抑圧が強まっている。多くの学術分野を支えているポスドク・非常勤研究者・教育者の研究・生活・権利状態は文化国家を名乗るに恥ずかしいほど深刻化し、学術の危機状態といっても過言ではない。
 こうした状況のもとで、研究者・教育者が労働組合に結集し、その条件のないところでは仲間をつくり、あるいは単独で、研究条件の確保と生活条件の改善を要求し、また学術研究のつり合いのとれた発展をめざして行動することは、当然の権利であり、社会進歩のための責務でもある。現在、多くの大学・研究機関で、企業よりの儲け本位の研究テーマの設定、一方的なテーマ変更・中断が研究者の意思を無視して強制されている。とくに中小の学園では、経営の都合や経営者の恣意的人事により、意にそわないものに対する人格攻撃、報復的処分、解雇・雇い止めなどの攻撃がくり返されている。
 このような不合理を是正するために、裁判所において公正な判断を求めることは、法治国家での重要なたたかいでもあるが、最近注目すべきは、裁判所の判決内容が、たとえば埼玉女子短期大学衣川准教授不当解雇や都教育委員会による疋田教諭分限免職の判決にも見られるように、日本国憲法23条(学問の自由)、教育基本法第9条(教員)の精神をないがしろにし、あるいは無視していることである。さらにはユネスコ勧告など国際的にも承認されている研究・教育に関する普遍的価値観、研究と教育という使命と職責の重要性、それにもとづく研究者・教育者の身分保障を少しも顧みていないことである。また、過労死訴訟判決おいては、専門職性におけるその労働の量的過重性(労働時間)と質的過重性の特殊性に関する無知ないしは無理解ははなはだしい。
 私たちは、上記事態に鑑み、平和と民主主義、学問の自由、教育の自由、大学の自治、学術研究の総合的でつり合いのとれた発展、軍事研究および人々の生活に害ある研究の拒否、研究条件の確保と生活防衛、法治国家としての公正な裁判のために、研究者・教育者として人間らしく生きるための諸権利の擁護のために、諸団体・個人と連帯し、あらゆる機会をとらえて仲間をふやし、行動を強める決意を新たにするものである。

院生・若手研究者の研究・雇用条件の確保を求める決議
現在、わが国の院生・若手研究者の置かれている環境は、大変厳しいものである。その最も大きな要因は経済的な逼迫と将来展望の不透明さであり、この二つの問題の解決なしに院生・若手研究者の状況は根本的には改善しない。
 大学院生について言えば、世界的にも異常な高学費にもかかわらず、大学から提供される研究設備や研究発表の場、学内の奨学金や学費減免制度、研究費補助等は一般に 乏しい。また、その傾向は国の教育・研究費への支出削減を受け、ますます強まりつつある。このような状況下で、大学院生の経済的基盤として公的な奨学金制度の重要性はいっそう高まっている。しかし、そもそもわが国の公的な奨学金制度には給付制奨学金が存在せず、世界的に見て極めて不十分な制度である。その上、近年いくつかの重大な制度改革が行われ、わが国の奨学金制度はいっそう本来の機能を失いつつある。すなわち、大規模な有利子奨学金の導入(1999年)、教育・研究職につく大学院生の返還免除職制度の廃止(2004年)、返済を滞納した奨学金利用者を個人信用情報機関に通報する、いわゆる「ブラックリスト化」への同意書の強制(2009年)などである。その結果、家庭収入が一般的に低下する中、奨学金の利用し易さの低下、無利子・有利子負債の増大、研究費・生活費のいっそうの切り詰めなど、奨学金制度の他に頼るべき経済的基盤を持たない院生に負担が一方的にしわ寄せされている。
逼迫する経済状況の中で何とか研究成果を出し、大学院生活を乗り切ったからといって、その後安定した研究生活が保障されているわけではない。むしろ、院生・若手研究者の就職問題は、今極めて深刻な状況にある。2008年現在、博士号取得者の大学教員採用率は約25%という状況であり、民間の研究職を含めても研究職への就職率は5割程度と、博士課程を出ても大半は希望する研究職につくことができないという深刻な事態が広がっている。そのため、博士号取得後も定職をえず、薄給の非常勤講師をいくつも抱え持つなどポスドク問題が深刻化している。また、運良く常勤の研究職につくことができたとしても、任期付などの不安定な就業形態におかれるケースが増えており、また、所属機関の雑務に追われ、腰を据えた研究ができなくなっているという声も多く聞かれ、若手研究者は安心して研究を行うだけの環境が与えられないことが多くなっている。これはひとえに、日本政府が高等教育には本来なじまない民間企業並みの競争原理を導入するとともに、大学院重点化政策によって大学院生を大幅に増やす一方で、それに見合うだけの研究職を確保してこなかったことによるものである。
院生・若手研究者の未来は、日本の科学の未来であり、日本社会の未来である。院生・研究者の知性の発展と日本の科学研究の未来を保障するために、学術と教育に対する公的資金の拡大と、専門的知識や技能を活かせる就職先の拡大が、いま何よりも必要である。日本政府は高等教育の漸進的無償化を定めた国際人権規約(A規約13条 2項C)に対する留保をすみやかに撤回し、院生にしわ寄せされてきた負担を軽減するためにあらゆる努力を行うべきである。また、公的資金を拡大し、院生・若手研究者の研究条件の確保・充実に向けるとともに、それを大学がこれまで削減し続けてきた常勤研究職の雇用の維持・拡大に用いられるようにし、院生・若手研究者の就職問題を正面から解決する可能性を開くべきである。

東京都中央卸売市場の豊洲汚染地への移転計画を中止し、現在地築地での早急な再整備を求める決議
 石原都知事の下、東京都は、中央卸売市場の豊洲地区への移転計画を強行する構えを見せ、3月都議会では、土地買収費1,260億円を含む2010年度予算を成立させた。我々は、この計画は、将来の都民の食の安全と安心を脅かすものとして、強く反対し、現在地築地での、早急な市場機能の再整備と強化を求める。  そもそも移転予定先の豊洲地区は、東京ガス(株)の石炭ガス製造工場跡で、ベンゼン・シアン・砒素を主体とする無数の複合汚染が生じていた土地であった。都心部再開発による巨大な利権を追う石原都政は、最初は汚染の事実を伏せて移転計画を立て、やがてそれが露見してからは、「現在の技術で十分除染が可能で、健康被害も抑止できる」と主張した。しかし、東京都がその「科学的根拠」としている専門家会議・技術会議の結論は、批判派の検証要求をことごとく拒否して作られたものであり、客観性が全く担保されていない。はじめからある結論を「科学」の名において正当化しようとしたもので「えせ科学」の見本とも言うべき代物である。加えて、3月10日に都が発表した「現地適用試験」の中間報告は、重ねての「安全宣言」を繰り返す一方で、根拠となる分析データの主要部分を「墨塗り」にして開示するという暴挙さえ犯した。このような当事者や専門家に、もはや科学性を云々する資格はない。
当該地域は軟弱地盤の埋立地であり、高確率で来襲する危険がある首都直下型地震では、地盤の液状化や側方流動による壊滅的な被害が警告されているにも関わらず、こうした条件を全く考慮せずに作成された対応工法の羅列で事足りるとしていることも、大きな懸念材料である。
 既知・未知の汚染物質を埋め殺したままでの市場操業は、将来の再汚染に大きな懸念が残り、食の安心・安全は担保できない。低濃度・長期間の化学物質暴露による健康被害の恐ろしさを、我々は水俣病やイタイイタイ病などの深刻な被害を通じて、如実に体験した。都民の台所をこのような場所に移すことによって、市場関係者の営業や、都民の食生活の安心・安全を脅かす今回の移転計画を、我々は黙視・傍観するわけにはいかない。
 築地市場の仲卸業者はもとより、一般都民の間でも、真相が判明するにつれて次々と移転反対の意思が示されつつある。我々も、「えせ科学」と対決して、かけがえのない都民の健康と食文化を守るために、共に連帯して行動する意思をここに表明する。

2009.7.4 日本科学者会議東京支部第2回幹事会

2016東京オリンピック現行招致計画の撤回を求める決議

東京都は2016年オリンピック・パラリンピックを招致する計画を進めています。本来、オリンピック開催都市の役割は、オリンピック開催を通して、オリンピック憲章で示されたオリンピックの目的の実現に努力し、平和な社会を生みだすことに貢献していくことです。しかし、今の東京の招致計画は、こうした開催都市の責任を果たすものになっていません。
IOC憲章に示されているように、「オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。」と規定されています。
しかし、東京都の招致計画は、世界一コンパクトなオリンピックを目指し、東京と日本を元気にするという主張が全面に立ち、本来の趣旨であるオリンピック運動に貢献するというよりも、経済効果を中心にしたものになっています。具体的には、「日本が持つ世界最高水準の環境技術と環境への先駆的な取り組み」を示し、「渋滞を解消する三環状道路等の整備促進、羽田空港の再拡張・国際化など空港、港湾機能の強化」を通じて都市を躍動させ、「全国に大きな経済効果をもたらします」というものです。オリンピック招致を口実にして、破たんした臨海開発、高速道路や環状道路の建設など、大型開発事業がすすめられようとしています。
一方、本来のスポーツ分野では、都のスポーツ振興予算は、東京都は石原知事が就任した1999年の約51億円から2004年の約16億円まで、約7割という大幅な削減がなされました。2005年より東京マラソンの開催とオリンピック招致のためとして、関連予算が増やされてきましたが、広汎な都民のスポーツ要求は切り捨てられ続けています。
他方で、東京都はオリンピック招致を口実にして、他分野の予算を削減し、現在の貧困な医療・福祉政策を一層切り捨ててきています。こうした都政が続けられた結果、オリンピック開催に関する世論調査をみると、開催候補地4都市の中で最低の支持率になっています。東京都の度重なる招致運動にもかかわらず、IOCの調査では、昨年よりも今年のほうが支持率が下がるという異常な事態になっています。
世界同時不況という環境の中で、日本は自治体も企業もスポーツ関係予算の削減を進め、スポーツ関係者からは悲鳴にも近い声が寄せられています。そうした中で、スポーツの愛好者や国民からも、本来のオリンピック招致に期待する声も高くなっています。こうした都民、国民の期待に応えられるような招致計画を取りまとめ、その願いが無駄にならないようにすることこそ、東京都に求められていることです。
日本科学者会議東京支部は、東京都に対して現行の招致計画を撤回することを求めます。
2009年7月4日
日本科学者会議東京支部

2009.5.24 日本科学者会議東京支部第43回大会

「派遣切り」を許さず、だれもが安心して働き生活できる社会の実現を

 アメリカ発の金融危機は、世界経済に大きな影響を与えているが、日本は先進国の中で最も深刻な景気後退に陥っている。その最大の理由は、「経済構造改革」政策を強行することで、国内需要を支える国民の労働の場を破壊してきたからである。また、地域経済を破壊し、社会保障制度の大幅な切り下げを進めてきたからでもある。 今回、景気後退に直面した日本の大手企業はまず、「派遣切り」を強行した。労働者を解雇するだけでなく、職を失った労働者を住居からも直ちに追い出した。蓄えも、家もない多数の非正規雇用者が路頭に迷い、「派遣村」に駆け込む事態が全国各地で発生した。  
この無慈悲な「派遣切り」のよりどこになっているのが労働者派遣法である。派遣労働者は景気調整弁として「使い捨て」にされ、労働者は単なる「利潤を生むためのモノ=費用」とみなされている。これら派遣労働は大学や研究機関にも拡充されており、博士号取得者にあっても「派遣」され、「解雇」される事態については例外でない。こうした状況は、憲法で保障された国民の勤労する権利、国民の生存権を無視するものであり、長いたたかいを通して築かれてきた労働者の権利を無惨に踏みにじるものである。同時に、労働の場での技能や技術の習得・向上の機会を喪失させ、物づくりの基盤や研究開発能力を破壊する行為であり、日本経済の将来を掘り崩すものである。
今日の深刻な雇用・失業状況を作った大きな原因は、まずは、大企業による横暴な首切り政策にあるが、同時に、そのような行為を規制することもなく放置してきた自公連立政権にも求められる。世界同時不況が深刻化するからこそ、安定した雇用の確保は、不況の打開策としても緊急かつ最重点施策をなす。また、失業保険制度の拡充、生活保護制度の充実化など、国民生活を守るための改革が緊急に求められている。現在、生活困難の激化と高学費のために高等教育の機会が奪われ、初等教育においても子供たちの学ぶ機会はますます貧困化してきている。将来の科学者・技術者のすそ野を広げ、科学・技術の基盤を守っていくことが求められていよう。
国民の生活向上を願い学問の発展に貢献してきた日本科学者会議は、今日の事態を打開するために、政府に、ただちに、製造業派遣を禁止し、労働者の地位を極めて不安定なものにしている登録型派遣を原則禁止とすることを強く求める。
国民の仕事や生活を犠牲にして市場競争に勝つことを最優先するような社会を改め、勤労国民が安心して生活できる社会を実現していくために、日本科学者会議は国民諸階層との社会的な連帯を強化していくことを表明する。

2008.5.18 日本科学者会議東京支部第42回大会

「憲法9条を守る運動の輪をさらに広げよう」

昨年の参議院選挙で国民が下した審判は、憲法改悪に反対し、構造改革路線の転換を求めるものであった。テロ特措法も昨年11月に期限切れで失効した。ところが、政府・与党は、インド洋への自衛隊の派兵を再開する新テロ特措法を衆議院での数の力にたのんで強引に成立させ、米軍再編への協力を継続し、さらに自衛隊の派兵恒久法の制定を狙っている。民主党も、新テロ特措法には同調しなかったものの、アフガニスタンに陸上自衛隊を派遣するという「対案」を提出し、その中では自衛隊の派兵恒久法の制定にも意欲を示し、この法案は、現在、衆議院で継続審議扱いになっている。これらはいずれも、憲法9条をないがしろにする危険な動きであり、軍事同盟によらない平和、外交による不和の解決を強く求めている国際社会の動きにも逆行するものである。

 そうしたなか、4月17日に名古屋高等裁判所は、自衛隊のイラク派兵の差し止め等を求めた訴訟の判決において、自衛隊のイラク派兵が憲法9条1項に違反するとの判断を下した。これは、自衛隊がイラクで行っている活動が他国による武力行使と一体化した行動であることを詳細な事実の分析に基づいて認定し、日本政府がイラク派兵を合理化するために作り上げた虚構を退けたものであり、また、憲法前文の平和のうちに生存する権利を具体的な権利とする画期的な判決である。

 こうした判決を引き出したのは、7000を超えた「九条の会」の運動に見られるような憲法9条を守れという国民の世論と運動の力である。この間のマスコミの世論調査でも、9条改憲「反対」は、「賛成」を大きく上回るようになっている。

 創設以来一貫して平和と国民生活向上のために科学者としての社会的責任を果たすことを追求してきた日本科学者会議東京支部は、9条をはじめとする日本国憲法の基本原理を守る運動がさらに広がることを強く願い、そのための取り組みを強めていくことを決意するものである。

2008.5.18 日本科学者会議東京支部第42回大会

「後期高齢者医療制度のすみやかな廃止を求める」決議

本年4月より,後期高齢者医療制度が実施された。高齢者のみならず多くの国民が高齢者差別の医療制度に怒り,廃止を求める世論が高まっている。

 この制度は,75歳以上の高齢者を国民健康保険や健康保険から切り離し,高額の保険料を徴収するばかりでなく,受診できる医療内容も制限する内容である。高齢者医療を他の医療制度から切り離す差別的な制度は世界に類を見ない。また,すべての国民に等しく生存権を保障し,国にそれを実現する義務を課した憲法第25条に反するものである。

 後期高齢者医療制度を導入した政府のねらいは、高齢者を別枠の医療保険に囲い込み、高い負担を課し、診療報酬も別建てにすることで、安上がりな差別医療を押しつけることにある。この背景には,医療・福祉に必要な予算を縮小し,企業による医療負担を軽減したい財界の思惑がある。しかしながら,日本の医療費は、対GDP比8%と先進国でも最低水準であり、本来ならばさらに増やすべきものである。

 誰もが安心して受けられる医療を求める私たちは,後期高齢者医療制度をすみやかに廃止することを求める。


2008.5.18 日本科学者会議東京支部第42回大会

「宇宙基本法案を廃案にし、宇宙研究開発を平和目的に限定することを要求する」決議

去る5月13日,自民・公明・民主・国民新党の4党は宇宙基本法案を衆院本会議で可決した。我々は,科学・技術の平和利用を願い,宇宙の軍事利用に反対する立場から,この法案に反対し,参議院で廃案にすることを要求する。
 
本法案の骨子は,日本の安全保障に資する宇宙開発利用の推進,宇宙産業の技術力と国際競争力を強化するための税制・金融上の措置,首相を本部長とする宇宙開発戦略本部の設置,秘密保持体制の整備,宇宙航空研究開発機構等の見直し,などとなっている。本法案は,「平和の目的に限り」と規定した1969年の宇宙開発に関する国会決議およびこの趣旨を引き継いだ独立行政法人宇宙航空研究開発機構法を根底から覆すものであり,さらに戦争放棄と戦力不保持をうたう憲法の平和原則とも相いれないものである。

 現在,自衛隊は米軍と一体となってミサイル防衛システムの設置をすすめている。自民党と民主党の防衛族・軍需企業幹部・防衛省幹部らは,ミサイル防衛監視衛星,海外派兵に必要な通信衛星などの,国費による開発を要求してきた。本法案はこれらの要求を背景としており,軍需産業に膨大な利益を保証し,世界平和に重大な脅威をもたらすものとなっている。それは同時に,憲法を改悪し,日本をアメリカといっしょに戦争をする国に変えていく策動と連動している。

 これまで日本の宇宙研究開発は,小惑星探査機「はやぶさ」や月探査機「かぐや」の例など,「自主・民主・公開」の原則のもとで行われており,世界からも高く評価されてきている。本法案の下では,軍事機密を理由に研究者・技術者は防衛省の管理・支配下に置かれ,研究成果は秘密のベールに閉ざされかねない。

 科学・技術の成果を平和と福祉の向上のために役立てることを願う私たちは,本法案の廃案を求めるとともに,宇宙開発は平和の目的に限定し「自主・民主・公開」を原則とすることを引き続き強く要求する。


2008.5.18 日本科学者会議東京支部第42回大会

「石原都知事ならびに自民党・公明党は新銀行東京の失敗を認め銀行業からの撤退を直ちに決断せよ」決議

石原都知事の肝いりで東京都が1000億円を出資して設立した新銀行東京は、2005年4月の開業以来赤字を累積させ、その額は2008年3月末で1016億円に達し、すでに都民の税金1000億円が事実上どぶに捨てられた。石原都知事は、新銀行東京が金融機関の貸し渋りに苦しむ中小企業経営者の救世主になり、1000億円が将来数兆円になると述べていたが、これがいかに荒唐無稽なものであったのかが、事実によって明らかにされた。
このような事態に直面して、石原都政は新銀行東京を再建するのか、それとも銀行経営から直ちに撤退するのかの重大な選択を迫られた。石原都知事が選択した道は、ベンチャーキャピタルやファンド投資などのニュービジネスを軸とした再建計画をもとに都民の血税から新たに400億円を出資させ、事実上死に体状態にある銀行を延命させることであった。だが、店舗を現行の6店舗から1店舗に、人員を450人から120人へ、預金額を1/20に、貸出金を1/5にと業務を大幅に縮小する銀行が、計画初年度の126億円の赤字をわずか4年間で8億円の黒字にいかにして転換できるのかの合理的な説明は一切なされていない。むしろ、金融の専門家からはこの追加投資によってハイリスクの融資が実行され、新たな損失が生まれるのではとの懸念が示されている。多くの都民が、無謀な再建計画を撤回し、これ以上の税金の無駄使いをするなと声を上げたのは当然である。
だが、都議会与党の自民党ならびに公明党は、都民の声を無視して、実現可能性の乏しい再建計画の内容を吟味することなく、石原都知事の追加出資案を強硬に採択した。石原都知事だけでなくそれに賛成した自民党ならびに公明党の政治責任は重大である。
都民の安全で豊かな生活を実現するために都民とともに都政改革に取り組んできた日本科学者会議東京支部は、石原都知事ならびに自民党・公明党が新銀行東京の失敗を認め、直ちに銀行経営から撤退することを強く要求する。


2008.4.25 日本科学者会議東京支部

<イラクからの自衛隊の撤退要求声明>
政府は名古屋高等裁判所の違憲判決を尊重し、ただちにイラクから自衛隊を撤退させよ

 4月17日名古屋高等裁判所は、自衛隊のイラク派兵の差し止め等を求めた訴訟の判決において、自衛隊のイラク派兵が武力行使を禁止したイラク特別措置法に違反するだけではなく、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めた憲法九条一項に違反するとの判断を下した。

 この判決では、イラクで現に進行している事態が、一国内の治安問題の域を越えた国際的な武力紛争であること、とくにバクダッドはまさにイラク特措法がいう戦闘地域に他ならないこと、そして、航空自衛隊がバクダッド空港等で行っている武装兵の輸送等の活動が他国による武力行使と一体化した行動であること等が、広範かつ詳細な現実の分析に基づいて認定された。日本政府がイラク派兵を合理化するために作り上げた虚構、バクダッドは戦闘地域ではない、非戦闘地域での自衛隊の活動は武力行使にあたらないという主張は、司法判断によって最終的に退けられた。

 現在では、アメリカ軍のイラクでの戦争行為がイラク問題の根本原因であり、その解決にはアメリカ軍がイラクからただちに撤退する以外にはないとの声が、国際世論の主要な流れとなっている。また、アメリカ軍によるイラクの多くの市民を巻き添えにした日常的な殺傷行為が新たなテロ活動を生むことにつながっているとの懸念が、国際的に広がっている。事実と法理に基づいて自衛隊のイラク派兵は違憲であるとの司法判断が下されたいま、世界に誇るべき平和憲法をもつ日本国政府は、アメリカのイラクでの戦争行為と一体化した自衛隊のあらゆる活動を直ちに停止し、自衛隊をイラクから撤退させるべきである。

創設以来一貫して平和と国民生活向上のために科学者としての社会的責任を果たすことを追求してきた日本科学者会議東京支部は、日本国政府が名古屋高裁の違憲判決を真摯に受け止め、ただちに自衛隊をイラクから撤退させることを強く求めるものである。


2008.2.20 日本科学者会議東京支部

神奈川県教育委員会による「君が代不起立教職員調査」に抗議する声明

 2008年2月4日、マスコミ報道によれば、神奈川県教育委員会が「君が代」斉唱時に不起立の教職員氏名収集を継続していくことを決定した。私たちは、わが国の学術研究と教育の正しい発展を期す立場から、内心の自由と教育の自由を尊び、この問題を重大視せざるを得ない。東京都教育委員会は、内心の自由にかかわる「君が代」斉唱を強制し、それに従わぬ教師に対して不利益を伴う重大な攻撃を加えている。これらがわが国の学術研究と教育の正しい発展を阻害するものであることは明らかであり、私たちはこれらに抗議し撤回を求めてきた。このたびの神奈川県教育委員会の決定は、内心の自由への重大な威嚇行為であり、即時撤回すべき性質のものである。

 神奈川県教委の決定は、多くのマスコミが取り上げている。それは、その内容自身の問題もさることながら、その手続きが特異なものであったためである。すなわち、神奈川県教育委員会がこの氏名収集にかかわって諮問していた内容は、2008年1月17日の神奈川県個人情報保護審議会によりすでに「不適」との判断を受けており、さらにいえば、その前年の2007年10月24日にも神奈川県個人情報保護審査会で同様な判断が示されていた。そして、神奈川県においてこれまで、個人情報保護審議会がくだした判断と異なった決定をおこなった実施機関はなかった。まさに、神奈川県教育委員会は極めて特異な決定をおこなったために注目されたのである。

 神奈川県教育委員会が個人情報保護審議会に諮問した要点は「個人情報の取扱いも公務員の職務・服務に関するそれとして、『思想及び良心の自由』の人権保障とは両立する」(神奈川県個人情報保護審議会2008年1月17日答申)ことの確認を求めたことにあった。しかし、同審議会が出した結論は、この諮問を是とする答申を出すことは不可能であること、すなわち、起立しなかった教職員名を校長に報告させる行為が、日本国憲法第19条の「思想・良心の自由」の保障と深く関係しているという判断であった。また、個人情報保護審査会も同様に、君が代斉唱時不起立の教職員名を収集することは、原則取り扱い禁止とされている思想、信条に該当する行為にあたり、神奈川県個人情報保護条例第6条違反との判断をくだしていたのである。

 しかるに、さきの決定をおこなった神奈川県教育委員会の会議では、氏名収集は人権保障と両立するとする、すでに二つの諮問機関から否定され続けている主張がくり返されたのみで、これら二つの諮問機関からくだされた判断に反論する明確な根拠を示さないままに、全員一致で氏名収集の継続が決められてしまった。否定された主張を根拠も示さずくり返して、個人情報保護審査会、そして個人情報保護審議会の二つの答申に反する決定をくり返してしまった神奈川県教育委員会の今回の行為は異常というほかはない。人間の内面形成に関わる教育に国や自治体の行政が過度に関与することは、これまでの最高裁判決においても抑制的であるべきことが指摘されてきたのであり、君が代斉唱時不起立の教職員名収集を県教育委員会が校長にさせることは、仮に学習指導要領を根拠に正当化しようとする場合でさえもそうとう無理のある行為である。

 マスコミ報道によれば、松沢成文知事は当初から個人情報保護審議会の答申を批判し、神奈川県教育委員会の決定を支持する発言をくり返している。もしもこうした政治的な背景によって神奈川県教育委員会が教育にふさわしい慎重な審議を経ないままに決定をくだしたとすれば、それは首長部局から一定の独立性が求められる教育委員会制度そのものの自殺行為にもなっている。  日本科学者会議東京支部は、神奈川県教育委員会が今回の異常な決定をすみやかに撤回し、すでに出された二つの答申を真摯に受けとめて審議をやり直すことを強く求める。 *神奈川県個人情報保護条例

第6条「実施機関は、次に掲げる事項に関する個人情報を取り扱ってはならない。ただし、法令若しくは条例(以下「法令等」という。)の規定に基づいて取り扱うとき、又はあらかじめ神奈川県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴いた上で正当な事務若しくは事業の実施のために必要があると認めて取り扱うときは、この限りでない。 (1) 思想、信条及び宗教
(2) 人種及び民族
(3) 犯罪歴
(4) 社会的差別の原因となる社会的身分」


2008.1.27 日本科学者会議東京支部

「新テロ対策特別措置法案」の再可決に抗議する声明

 自民党と公明党は、2008年1月11日、参議院で否決された「新テロ対策特別外法案」を、衆議院で、憲法第59条第2項の規定を用いて、出席議員の2/3以上の賛成をもって再可決した。
 衆議院による法案の再可決の制度について、国民主権の原理にたって考えれば、その使用は無制限ではなく、主権者国民の意思と利益に合致する場合にのみ、例外的に可能となるものであると考えられる。なぜならば、法案の成立は、衆議院と参議院の双方の可決によるのが原則であるからである(憲法第59条第1項)。
 主権者国民の意思については、衆議院と参議院は、ともに同じ選挙民に選挙される国民代表機関であり、同質のものであるから、現在の国民の意思は、2007年7月29日投票の第21回参議院選挙で示された国民の意思と考えられる。この選挙において、自民党と公明党は敗北をしたのだから、「新テロ対策特別措置法案」を否決した参議院の野党による意思決定を否定する衆議院の与党による同法案の再可決を行わないことが、国民主権に基づく憲政の常道であると考えられる。
 また、「新テロ対策特別措置法案」の内容である自衛隊によるインド洋上でのアメリカ軍等への給油・給水活動の再開については、各種の世論調査によれば、いずれも反対が賛成を上回っているから、この国民の意思を尊重して、同法案の再可決を行わないことが、国民主権に基づく憲政の常道であると考えられる。
 しかも、自衛隊によるインド洋上でのアメリカ軍等への給油・給水活動は、「戦闘」行為を支えるための不可欠の「後方支援」行為と呼ばれる軍事活動(戦争行為)であり、そして、自衛隊による他国の軍隊への「後方支援」行為は、集団的自衛権の行使となるから、憲法第9条の下では、「新テロ対策特別措置法」は、制定することが許されない違憲の法律である。
 なお、自民党は、第9条に違反する自衛隊の海外派兵恒久法を制定しようとしているが、自民党と公明党が、参議院で反対した民主党の海外派兵恒久法の制定をも主張している「アフガニスタン復興支援特別措置法案」を、衆議院で継続審議扱いにして、海外派兵恒久法の制定に利用しようとしていることは、憲政を歪めるものとして、厳しく批判されなければならない。
 科学者としての立場から、平和と国民生活向上のために創設以来一貫して活動してきた日本科学者会議東京支部は、自民党と公明党による法案の再可決の制度の不正使用と、テロの拡大に拍車をかけることになる「新テロ対策特別措置法」の制定に、また、民主党の「アフガニスタン復興支援特別措置法案」の継続審議措置に、強く抗議する。それと同時に、私達は、自衛隊のインド洋への再派遣や自衛隊の海外派兵恒久法の制定およびあらゆる自衛隊の海外派兵の策動に、断固反対する。
 同時に、私たちは、「アフガニスタン戦争」と「イラク戦争」の現状から、戦争によってテロを根絶することができず、逆に、戦争がテロを拡大することが明らかになった今日、第9条をもつ日本のなすべき道は、アフガニスタンからのあらゆる国の軍隊の撤退の提唱とアフガニスタンのあらゆる階層・宗派の人々による大和平会議の開催の尽力であると考える。


2007.5.20 日本科学者会議東京支部第41回大会

憲法原理に反する憲法改正手続法の拙速な制定に抗議する声明

 さる5月14日、参議院本会議で憲法改正手続法が自民・公明などの賛成多数で可決され成立した。歴代の自民党政権は、現行の日本国憲法の平和的条項などの「改正」を主張してきたが、この法律はその具体的な「改正」作業に着手しはじめたことを表している。さらに、この法律は、国の最高法規である憲法に最も密接に関わるものであるにもかかわらず、次の諸点において憲法原理に反するもので、目的と内容において大きな問題をはらんでいる。
 第一は、最低投票率の制度がないことである。国民投票が主権者による国の最高法規たる憲法の改正の是非についての判断にふさわしいものとなるためには、この種の制度を採用する方が憲法適合的である。にもかかわらず、与党は、いわゆるボイコット運動の可能性や、憲法が定めていない要件を法律で加重することはできないなどという、理由にならない理由を挙げて、この種の制度の導入を拒否した。国会審議でこの問題点を指摘しながら、その修正案ではこの制度の導入を見送った民主党の責任も決して軽くない。
 第二は、国民投票運動の規制である。法律には、公務員等・教員の地位利用による国民投票運動の禁止、公務員による国民投票運動への国公法・地公法による政治的行為の制限の適用の可能性、恣意的な運用が可能な組織的多数人買収・利害誘導罪など、主権者国民が憲法改正というきわめて重要な問題を判断する際にふさわしからぬ数々の運動規制がみられる。これらは、罰則の有無に拘わらず、その規制・禁止の対象・内容のあいまいさによって、国民の運動に萎縮効果を及ぼすものである。
 第三は、国民に対する広報の不足と歪みの可能性である。法律によれば、国民に対する改正案の正式の周知となる「国民投票公報」の配布以前に期日前投票が可能となる場合がある。広報協議会は、その構成と広報のし方の点で不公平な広報を排除する配慮が不足している。
 そのほかにも、本来衆議院の優越を前提として開催されるはずの両院協議会の制度を採用していること、放送や新聞を利用した意見広告において政党や政党が指定する団体以外の者の無料意見広告への配慮が欠けていることや投票期日前14日よりも以前の広告放送が野放しになっていることなど、慎重な検討を要する問題が山積していたにもかかわらず、与党は、「今国会での成立を」、「参院選で改憲問題を争点にする」という安倍首相の熱烈な応援の後押しを受けて、拙速な審議により成立させてしまった。
 この法律を制定するべきでなかったことは、5月11日の参議院憲法調査特別委員会での裁決時に18もの多数にのぼる附帯決議がつけられたことが如実に物語っている。そして、こうした決議を出さざるをえなくさせたものは、これをむりやり制定しようという改憲勢力とこれに対抗して憲法を守れという圧倒的な国民の世論との矛盾である。
私たちは、上記のような重大な問題点を含むとともに、憲法審査会を設置して数年後の改憲をもくろむ今回の法律の制定に強く抗議するとともに、今後とも憲法を守れという国民の声に依拠して、平和と民主主義の実現をめざして学問・研究をすすめていくものである。

2007.5.20 日本科学者会議東京支部第41回大会

安倍政権の下での教育三法の改定強行の動きに抗議する声明

(一)教基法改悪のもとで
 安倍政権は、昨年末、教育基本法の改悪を強行した。この改悪は、教育基本法に、国民が身につけるべき「資質」を規定し、学校教育をそれに沿った国民資質形成の場として、国家が強力に管理・統制する仕組みを組み込むものであった。また1947年教基法の第10条に規定された教育の自由に関わる3つの規定、すなわち「不当な支配」の禁止、「教育の直接責任性」、「条件整備行政」の規定を削除、ないしは無力にしようとするものであった。この新たな困難な中で、私たちは、憲法の人権と自由の理念に依拠し、民主主義教育の理念と法的根拠をあらたに創造・発展させる歴史的課題と向かい合っている。
 政府は、この改悪の内容を、学校教育において具体化するために、今国会で教育3法を成立させようとしている。

(二)教育三法のねらい
 「学校教育法」の改定は、学校教育の目標に、「我が国を愛する……態度」等を含んだ多くの「態度」規定を持ち込み、学校教育で実現すべき徳目を規定しようとするものであり、憲法に規定された「思想・良心の自由」を犯すものとなるおそれがある。また文部科学省が「教科に関する事項」を決定するとあったのを、「教育課程に関する事項」と書き換え、政府・文科省が、教育内容に無制限の干渉をすることが可能な表現に変えられている。さらに、学校評価について、「文部科学省の示す基準に沿って」という文言を組み込み、文科省の意図する教育内容や学力のあり方に沿って評価させ、教育内容に対する全国的なコントロールをねらっている。この規定はまた個々の学校に学力テストを行うことを義務づける規定として悪用される可能性も含んでもいる。また新に「副校長」や「主幹」を導入し、強力な上からの支配・統制システムを実現しようとしている。また、大学においても管理と統制を強められ、社会貢献の義務付けが規定されており、その運用にあたっては科学と学問の進歩を阻害しかねない内容をもっている。
 「教育職員免許法」の改定では、10年ごとの教員免許の更新制を導入し、一律の30時間に及ぶ更新のための研修を義務づけ、併せて、管理に従わない教員を「指導力不足教員」として、免許更新を拒否できる仕組みを作り出そうとしている。
 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改定では、法令違反により、「児童、生徒などの教育を受ける機会を妨げ」、あるいは、「教育を受ける権利が侵害されていることが明らか」な場合に、教育委員会に対する「是正要求」をなす文部科学大臣の権限を規定し、学習指導要領に従わない場合、是正要求をできるようになる。文科省の説明では、この規定は国旗・国歌の実施についても適用されると説明している。このことは文科省の統制権限を大きく拡大させるものである。
 これらの方向は、日本の学校教育を、一層の競争と統制とにさらす結果をもたらし、国民の期待する教育の再生には決してつながらないものである。

(三)教育三法改定案の廃案を要求する
 国民が望んでいるのは、こどもの権利条約に示されているように、子ども一人一人を大事にして、どの子にもわかる喜びを与え、学ぶ意欲を引き出すような行き届いた教育であり、日本国憲法にうたう国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、それらを身につけた自立した主権者として成長するための教育である。そして、世界の教育改革の方向も、教師の自主性が尊重され、すべての子供たちが相互に成長し合えるような教育へと進んでおり、また、自然と社会との共生の必要を自覚した未来の人類の担い手を育てるものとなってきている。 私たち日本科学者会議は、創設以来平和と国民の生活向上のために学問研究の創造的発展に努めてきた。また、高等教育を担うものとして、広範な教職員ならびに地域住民とともに子供たちが学ぶ教育現場の充実と改革のために努力してきた。教育の荒廃を進める教育三法の改定案の廃案を強く求めるとともに、日本の民主主義と平和の新たな前進を切りひらくために、一層の力の結集を呼びかける。





2006.12.3 日本科学者会議<第16回総合学術研究集会>

●教育基本法改正案に関する集会宣言

日本科学者会議は、創設以来日本の科学の進歩と平和・独立・民主主義・人びとの生活向上のために努力をかさねてきた。私たちは、その立場から、政府による教育基本法改正案の内容およびその審議の進め方に関して、広く国民に対してその危険性と欺瞞性を指摘せざるをえない。

自民党・公明党は、政府が今国会に提出した教育基本法改正案を、衆議院特別委員会ならびに本会議において、強行採決をよしとしない野党の欠席のもとで、与党単独で採決した。同法案は目下参議院での審議途上にある。この間同法案に関しては、市民・マスコミ・法律家・教育関係者など多くの立場から、なぜ、何のための改正か不明確であり、説得的でないとの疑念・批判が寄せられている。提案者である政府・与党は重い説明責任が課せられているにもかかわらず、審議の過程で本質的な議論を徹底して避け、国民の声に誠実に向き合っていない。そのことは、最近あいついで明らかになったように、政府・与党がタウンミーティングのねつ造までして国民世論の誤導を企んでいることからしても明らかである。

改正案の形式についていえば、この改正案が現教育基本法が定めた教育理念・教育像を根本的に否定し、実質的には新法制定に相当する全面変更案であるにもかかわらず、あたかも現行法の修正にすぎないという形式を装った問題性がある。内容的には、それが一方では、改正案第二条にあるように、道徳・態度主義的性格の極めて強い教育を志向するものでありながら、他方では、改正案第五条に示されるように、義務教育に関して国が負う責任を曖昧化・放棄し、もって教育を一層自己責任化する志向性も有していること、それでいて改正案第十六条二項にあるように、あたかも全国一斉学力テストの実施権を国に担保するかのような国家統制的要素も内包している。規制緩和と統制、ナショナリズムと新自由主義とを雑に合体させた、危険であると同時に一貫性のない教育像が示されている。さらに、そうした教育を推進する体制として、改正案十六条では、現教育基本法第十条の「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」との条文が、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」と変更されている。子ども・保護者・住民への直接責任性によって成り立つ教育から、法に拠らなければ制限されないが、法に拠ればどのようにでも制限できるという“法の留保”による教育への極めて根本的な改変がめざされている。また、改正案第十七条、教育振興基本計画の規定により、国会の議すら経ずに、政府の一存で教育計画を策定・実施できる体制が組み込まれており、「不当な支配に服することなく」の語に反して、教育が時の政府の政治的思惑に大きく支配される体制がつくり出される危険性が濃厚にある。

 そもそも教育基本法は、広く知られているように、戦前の教育に対する深い反省に立ち、日本国憲法と密接な関連をもって、戦後教育の根本を定めた法律である。これの改正にあたっては、憲法に準ずる注意深い扱いがなされるべきである。しかるに、その改正動向は、提案されている改正案の内容においても、審議経過の手続きにおいても、法のもつ重みに比してあまりに不適切・不十分であり、教育という営みの人と社会にとっての価値をまっとうに認める立場からは、到底容認できないものである。

さらに、このような教育における国家主義的統制の強化および新自由主義的な競争原理の徹底は、学問の自由および大学自治、ひいては科学・技術の総合的でつり合いのとれた発展を大きく阻害することが予想され、その点からも、改定案の内容と政府与党の審議のすすめ方を断固として拒否するものである。

国民世論の動向と国会審議をこれほどまでに軽視し、数の論理で本法案を今国会で暴力的に成立させようとする政府・与党の性急な立場は、安倍首相が5年以内の憲法改正を明言しているように、彼らが今回の教育基本法の改正をその露払いとして位置けていることを如実に示しており、その点からも強い危惧の念を表明せざるをえない。日本社会の未来およびその土台ともなる教育に重大な関心をもつ私たちは、教育が日本国憲法に則り、人格の完成と平和的国家および社会の形成者を期しておこなわれ、そのためには教育が権力の不当な支配に屈することなく、国民全体に対し直接に責任を負っておこなわれことを強く自覚し望んでいる。教育基本法の国会審議が広く国民の意見、とくに現場の教育者のこれまでの実践と教訓が反映されて、誠実におこなわれることを心から望むものである。


2006.9.25 日本科学者会議東京支部

●東京都知事・東京都教育長への申し入れ
『東京地裁の「日の丸・君が代強制違憲判決」に服し、控訴断念と「10・23通達」撤回及び不当処分取消の申し入れ』


東京都知事 石原慎太郎 殿
東京都教育長 中村正彦 殿

 9月21日東京地裁は、「日の丸・君が代」強制反対訴訟において、2003年10月23日の東京都教育委員会の通達の内容とこれに基づく校長の職務命令が、憲法19条の思想・良心の自由を侵すものであり、また、この通達とその後の東京都教育委員会の校長に対する一連の指導等が、教育基本法10条1項の教育に対する不当な支配に該当するとの判断を明確に下した。
 東京都ならびに東京都教育委員会は、憲法・教育基本法の精神に基づいた教育を学校現場で実現するために「日の丸・君が代」の強制に反対してきた多くの教職員に対して、上記の通達を根拠に、これまで不当な懲戒処分を繰り返してきた。教育の現場に本来強制はなじむものではなく、教育基本法も教育行政の目的を「必要な条件整備確立」に限定している。それは、同時に、国家権力の教育への不当な介入が、皇国思想や軍国主義思想を鼓舞し、国民をあの悲惨なアジア・太平洋戦争に駆り立てたことへの深刻な総括によるものである。
 「日の丸・君が代」の教職員に対する強制が違憲・違法であるとの司法判断が下された今、東京都ならびに東京都教育委員会は、この間の教育への不当な介入を深刻に反省すべきである。
 日本科学者会議東京支部は、東京都ならびに東京都教育委員会に対して、上記の東京地裁判決を真摯に受け止め、次の三項目を実施するよう申し入れるものである。
 (1)控訴を断念する。
 (2)2003年10月23日の通達を撤回する。
 (3)被処分者に対する不当処分を取消す。


2006.5.21 日本科学者会議東京支部第40回支部大会

『東京都の試験研究機関リストラに反対し、都民のための公設試験研究機関の充実を求める』決議

 2003年4月、再選された石原知事は「より過激にやる」と豪語し、同年11月「第二次都庁改革アクションプラン」を策定しました。この「第二次アクションプラン」は、まさに「都政リストラ」のオンパレードと言えるもので都政全面にわたってリストラを押し進めるものです。
 試験研究機関についてみると、それぞれ実行期限(最長2006年度)を定めて、業務、運営の見直しを指示し、縮小廃止統合を含め、民営化、財団化、地方独立行政法人化などを迫っています。
 その結果、2005年4月には、東京X豚の開発で知られる畜産試験場など農林畜産系の3試験場は農林総合研究センターに統合されると同時に、(財)農林水産振興財団に移管されました。島しょに分散している各分場は、本体から切り離され、水産試験場と統合されて島しょ農林水産総合センターへと再編されました。現場を無視したこれらの再編統合は、調査研究を進める上で大きな障害になっています。また、商工系の産業技術研究所は、大きな反対運動が展開されたものの、2006年4月には、中小企業振興センターと共に再編され、一般型地方独立行政法人の都立産業技術総合研究センターになりました。法人化により「中小企業の振興」という本来の業務が歪められる恐れが強まっています。
 また、2005年5月末には、試験研究機関のみを対象に、アクションプランの検討作業に追い打ちをかけるように総務局長通知が出されました。通知は、「行政権限を行使しない試験研究機関は原則直営廃止」、「2006年度組織改正に反映せよ」などとして、「地方独立行政法人化、公益法人への移行・全面委託、組織の廃止等」を迫っています。その結果、土木系の土木技術研究所は研究機能が廃止され、2006年4月土木技術センターに縮